お留守番のあとに。

正直ミン・ヒジンもパン・シヒョクも好きじゃないので、どうでもいい。

【TXT】その世界観はオカルトファンタジー

TOMORROWxTOGETHER(以下TXT)の世界観というのは、およそフレッシュな新人アイドルらしからぬ、奇妙で不穏で不気味な空気を孕んでいる。だだ誰もそんなこといってないだろうが、わわ私はそう思う。とてもそう思う。あんなに、明るく元気でPOPな美少年たちなのに、彼らが歌う世界観は、どこか暗く冷たく、そして恐ろしい。

 

❶怪物思想

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だって、デビュー曲がいきなり1-②「ある日、頭から角が生えてきた」(CROWN)だもの。そう。いうなれば、この曲の歌詞が、TXTの世界観を端的に要約したコンセプトストーリーといっていい。でも、全世界注目の新人のデビュー曲が暗くて怖いってのはよろしくないので、公式MVでは単に元気で明るい映像にとどめてる為、あれでは何もわからないことになっている。そのかわり、1-⑤「Nap A Star」(星の歌)MVの方で、童話風に話をアレンジして映像化してるのでそっちを見るとわかりやすい。まず、デビュー曲の方の歌詞を超意訳すると、こんなふう。

「僕、普通にしてるのに皆と違ってるみたいで、毎日、嘲笑われて(いじめられて)るんだ。辛い。とても寂しい。誰か助けて。もう嫌で嫌で逃げ出したい。消えてしまいたい。そんなある日、僕の頭から角が生えてきた。ああ、僕はもともと怪物だったのか!僕は怪物、僕は悪魔。ああこれが僕の完璧。これで完璧になった。これは王冠みたいなもの。そしたら突然、目の前に君が現れた!君にも翼がある。僕と同じ傷があるね。僕たち2人はもともと一緒だったんだね。よかった。一緒に逃げよう。永遠に遠くへ。もう辛くないよ。苦しくない。ほらもう僕には角が生えてきたのだから」

そして、「Nap A Star」MV版では、ある朝、頭から角が生えて怪物になったヨンジュン以外の別の4人も、それぞれの場所でそれぞれ目.肩.耳.背中が異形化しており、全員なんらかの怪物だった話になっている。角が伸びていく己の姿が怖くなったヨンジュンが森に逃げて1人で寝てるところに、4人がきて再会、抱き合ってヨカッタヨカッタと。(ちなみに2-⑥「Magical Island」で「覚えてる?あの星の歌を」といって続きが語られてる)恐らく、もともとのコンセプトは、僕(主人公)が1人、一緒に逃げる君が1人だろう。メンバーが5人いて全員で芝居するので5人共怪物に変えただけだと思う。それをいうと、もともとのコンセプトストーリーも、TXT側がいちから全部書き上げた話じゃないと思う。この怪物思想みたいな発想は、どこかの民間伝承とか有名伝説が元ネタなんじゃなかろうか。ユニコーン(一角獣)やドラゴン、天使、モンスターなどの寓話的なお話が。私が知らないだけで!申し訳ない。最初から元ネタがわからないので話しにくいが、いや、ある。きっとあると思って話を進める。 
 怪物というモチーフやキーワードは、他にもよく出てくる。例えば、1-①「Cat&Dog」の角。犬のような猫になってずっと側にいたいというかわいい歌だが、MVでは、犬や猫の耳が、結局、立派な角になってしまってる5人とか。あと、フルアルバム2枚目には、2-⑤「怪物を生かしておいてはいけないの?」(Can’t We Just Leave the Monster Alive)という歌まである。こんなフレーズをタイトルにするとは、わかる人だけわかればいい的なメタファーとはいえない。で、この歌だけど、RPGゲーム中の話としながらも、「怪物がいてもいいでしょ 君は英雄になる、僕は怪物になる」というフレーズがあったり、「森の中の怪物も大好き」(1-⑤などのこと)などがあって、矛盾のない話となっている。
 怪物の話は、今後もまだ歌詞になるだろう。これがコンセプト原型になってるぽいので。しかし、人間ではない想像上の生き物と超常現象の話である。いくらかわいい着ぐるみを見せられても、根底に不気味でダークなものを感じてしまうのは私だけか。少なくても、健康的ではない。空を飛んだり村を燃やしたり見えないものが見えたりするんでしょ。だからこそのファンタジーだし神秘的なんだろうが、それはやはり恐ろしい。

 

❷「片割れ」思想

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突然だが、映画「君の名前で僕を呼んで」(17)をご存じか。美少年と美青年が北イタリアでいちゃこらする美しい同性愛映画だ。主演のティモシー・シャラメを「地球上で最も美しい生き物」とまでいわしめた名画だが、この映画はじめ他諸作品の元ネタ思想の影響もマジで感じている私だ。BLのことではない。タイトルの「君の名前で僕を呼んで」のことだ。
この考えは、「二体一身」俗に「片割れ」思想といわれる話で、元の元ネタは、プラトン「饗宴」に書かれてるもの。アリストパネスの演説に〔元来人間には、男と男(男)、女と女(女)、男と女(両性具有)という3種いて、脚4本頭2つあり背中でくっついてた。がある時、全能の神ゼウスを怒らせてしまい、ゼウスが人間を真っ二つに切り裂いてしまった為、人間は、それ以降ずっと自分の半身(片割れ)を探して彷徨うようになった]という思想だ(ちなみに、3種の人間の中では圧倒的に両性具有タイプの人数が多かった為、切り裂かれた後、男は女を、女は男を探すケースが多いのだという話も)。日本でいう「赤い糸で結ばれてる」説にも近い。
映画で、自分が愛する運命の君に「君の名前で呼んで」と頼むのは、自分は君の片割れだったからだ。僕は君で君が僕で、状態なのだ。実際に、2人は抱き合いながら自分の名で相手を呼ぶ。
それと同じで、TXTコンセプトストーリーの中では、苦しむ自分を助けにくる「君」を、たった1人の自分の「半身」片割れと描写してることが多い。だからこそ、たった1人なんだという感じや、やっと見つけたという感じが出るのだ。1-②「ある日、頭に角が生えてきた」にある「君以外、誰も持ってない」「君の翼も僕と同じ傷があるのかな」というのは、昔、1つの身体でくっついてたから同じところに傷があるってことだし、「やっとこれで完璧になれた」は、片割れを見つけて完全体に戻れたってことで、「僕たち2人は2人2人2人じゃないか」も、もともと2人は同じ人間だったという意味だ。この歌は、あと、現れた天使にズバリ「僕の半身にいってやってよ解決するのは僕じゃないって」「ボクの名前が呼ばれた瞬間」などもそう。

そして、1-①「BlueOrangeade」には、「お互いに惹かれてばかり」「僕たちは同志同志同志同志」「君が側にいてこそ完璧なんだから」というズバリフレーズもある。2-②「9と3/4番線で君を待つ」(93/4)(RunAway)に関しては、アルバムタイトル「MAGIC」からわかるように、魔法使いと魔法ということで括っているので、怪物が魔法に変わっている。が、歌詞はほぼデビュー曲「ある日頭に~」と同じ話である。タイトル曲なので、これも超意訳しとくとこんな感じ。
「僕以外は皆幸せそうなんだけど、僕は笑えないほど辛くて 苦しくて もう我慢できない 君がいないと僕はもう ねえ僕の手を握って さあ一緒に逃げようよ? 夜になって暗くなったら あの魔法学校行きの特別列車に乗って 夜の空を一緒に走って逃げ出そう ねえ僕の永遠になって 僕の名前を呼んで 夜が終わりそうなら 魔法で時間を巻き戻すから 世界の終わりまで永遠に僕と一緒に」
ストーリーはそのままだし、「僕(の名前を)呼んで」「僕の永遠になって」などは、「片割れ」思想やそれとは関係なくこの映画のうっとり美しい雰囲気なども盛り込んでるように思う。

 

❸ 吸血鬼(化け物)と永遠に生きようとする世界
これまた唐突だが、私が大好きな映画「ぼくのエリ」(08)「モールス」(11)の影響も、色濃く感じる。「モールス」は見てないが、でもスウエーデン映画「ぼくのエリ」をアメリカでリメイクしたものなので、ほぼ同じ内容かと。

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これらは、バリバリの吸血鬼映画で大量に人間が殺されるので、ホラーやオカルト、クライマックスはスプラッターとも言える内容なのに、そんな吸血鬼との友情から始まるとこがとてもいいのだ。そしてそこが似てるんだって。
つまり、TXTのコンセプトストーリー「毎日いじめられてて辛い僕 そんな時 目の前に君が現れて 僕を救ってくれる さあ一緒に行こう これからずっと永遠に一緒に行こう」という部分が、これまた、まんま映画のあらすじなのだ。「君の名前で僕を呼んで」と違って、「ぼくのエリ」は設定などもざっくり似ている。まあ、よく考えたら、学校でいじめられてる子が強い友達に助けられる話なんてよくあるのかもしれないが、その子が吸血鬼であること、人間とは明らかに違う(食べ物とか跳べるとか不老)生き方なこと、そんな子と強い絆で結ばれてること、そんな子だからこそ助けてくれること、一緒に街から逃げ出すこと、永遠に一緒に逃げ続けること。。。っていう映画の設定とストーリーが、どうもTXTの世界観に被ってる気がしてならない。怪物も吸血鬼も同じようなものだ。ついでに、吸血鬼という要素だけ見ると、1-①「BlueOrangeade」には、「君がいるから僕はずっと若くいられるんだ」「冷たい僕を溶かしてくれ」「真っ暗な世の中」、そして、朝に「僕がおはようといったら君はおやすみといって寝てしまう」という歌詞も、吸血鬼エリの日常そのもので、映画にはその描写もちゃんとある。
そして、タイトル曲2-②「93/4番線で君を待つ」。これはたしかに、ハリーポッターという、ファンタジーの中でも最もPOPで上品で楽しい絶好作品だと思われ、絶好のモチーフを採用したと思う。冒険感もあるし。よく思いついた。でもギリギリだ。怪物や吸血鬼が、今度は魔法使いにかわっただけで、結局、人間の姿をした超能力をもった化け物なのはかわらない。
この曲は、歌詞よりMVで、不気味さを伝えてくる。例えば、冒頭にヨンジュンがナイフで指にケガをして血が出てるのだが、最後に、魔法の国へ行った時には綺麗に傷が治っていたこと。教科書やらドアやらが盛大に炎を出して燃えるところ。やはり映像にしてくれると不気味だねえ。そして、クライマックスは、何よりもプールのシーン! ネタバレになるのでいえないが「ぼくのエリ」で一番壮絶なイジメがあるシーンと瞬時に救われるシーンが、プールなのだ!あのカタルシス!忘れられない。思い出しただけでも、ぞぞ~~っとする。めっちゃびっくりしつつ爽快感ありつつ恐怖感マックス!というわけわからん面白さなので、是非見て欲しいのだが、あのプールがMVの最後重要部分で登場するのだ。プールだからって、あんな惨劇が起きるわけじゃないが、映画見てる人はぎょっとすると思う。監督なのかPDなのか、絶対この映画見てて、ファンの人がいると思う~。メンバー5人は、夜の学校のプールに飛び込んだりして遊んでるうち、プールの底に秘密のドアを発見。そこは魔法の国への入り口。5人が入っていくと、鬱蒼とした森が広がり、その先にはまた大きなドアが。。。っていう、正直、細かいことはわからんが、夜!少年たち!傷!血!プール!眼鏡をかけると違う景色が見える! 炎! 魔法陣!などなどのアイテムは、表向きは「ハリーポッター」というつつがないメジャーな題材にしておいて、マニアックに見ていくと実は「僕のエリ」的な、美しくも残酷で不気味な世界と読めなくはない。そして、血といえば、1―⑤「NapAStar」MVで、角の生えたヨンジュンが、なんとか角をへし折ろうと、森の中でゴリゴリやってたら、えらい流血量で血まみれになって倒れてしまった(ほんとに可哀想だし怖かった)のに、2―⑤「怪物を生かせておいてはいいけないのか」では、怪物である「僕はナイフで切られても全然平気だ ここがピリっとするだけ」とかいってる。完全に怪物になれば大丈夫ってことなんだろうか。わからんが実際、血の話も結構出てくる。
最後のトドメ。1-②「ある日頭から角が生えてきた」のイントロを思い出してほしい。楽器の音が出る前に、まず、モールス信号みたいな音が入っている。曲が始まってからも、ちょいちょい聞こえてたと思うが、これは、映画「モールス」のタイトルにもなってる通り、あのモールス信号だと思って間違いない。「ぼくのエリ」「モールス」の中で、主人公のいじめられっ子と隣に越してきた子が、壁伝いに連絡をとるのに使っていたのが、モールス信号なのだ。デビュー曲の、真っ先に聞こえてくる音をモールス信号にするなんて、やはり、誰かスタッフにファンがいてオマージュを捧げてるとしか思えない。それか、「これはあの映画のことですよ!」と気がついてほしくてわざとやってると思う。

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以上。いかようにもとれる歌詞を、自分のバイアスをかけまくって、少々無理めに解釈してみた。韓国語がわからない私は、疑問に思って調べてみるから、あそうなんだとわかるけど、韓国語が母国語の人は、歌を聞くたびこんな変わった歌詞のことどう感じてるんだろう。

間違ってるかもしれない。てか、私が勝手に感じた体験談なんでそりゃ正解ではない。しかし、こういう映画が強く印象に残ってる者(私)にとっては、初めてTXTのMVや歌詞を見た時から、すぐ、あの辺のオカルト&ファンタジーを思い出して結び付けたくなった。一度そう思うと、あとはもう何を見てもオカルトを連想してしまうし、その影響の跡を探してしまう。

いいたいことはわかるのだ。TXT世界観の底には、「姿かたちが違う者とも仲良くできる!要は愛!要は友情!」てことを、全地球の皆さんに訴えたい!できれば、うちも国連スピーチでメッセージを送りたいくらい!ということだろう。が、繰り返すけど、新人K-POPアイドルが使うジャンルとしては、化け物ファンタジーは少々不健全だし、もともとが人間界と敵対してる異質世界なので親しみやすさに欠けると思う。神秘的すぎて、黄泉の世界つまりすぐ「死」を連想してしまうから。

TXTの世界観は、一作ごとに新たに作るのではなく、BTS先輩のように、細かく丁寧に作りこんだ同一のものを、今後数年間3部作くらいにわたって徐々に展開していくと思われる。同じ若者の葛藤や疎外感を表現しているにもかかわらず、BTS先輩は、どの時期も常に、泥臭く真っ向からストレートに心のまま正直な世界観を創ってきたことを思うと、まったく同じことをやっても、しょうがないのかもしれない。大体、自分で自分を救う方法まで編み出したBTS先輩にくらべ、後輩TXTは、常に、救いの君をただ一方的に待ってるだけ。そんなことでいいのかっ!という気もするが、同じことしても意味ないから、正反対の方向から、TXT独自のやり方で、少年たちの葛藤や孤独との闘いを描こうとしてるだけなのか・・・。などと、偉そうに思いました。

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※TXTメンバー5人は、BTS先輩とは違って、自分たちで曲や詞を書かない。恐らく、グループコンセプトなどの協議にも参加してないと思われるので、どこまで、こういう大人たち(制作陣&プロデユーサー)が決めたコンセプトや世界観を聞かされているのか、それに対してどう思ってるのか。とかは考える。しかし、どういうふうに思ったとしても、それに何か違和感を感じたり文句つけたりできる立場ではないだろうし、ただただ一生懸命理解して消化して、日々働いているのだろう。私は、個人的には、先述したように、常に「この世界観で大丈夫なの?」と心配する気持ちを持つことにより、その分、ひとより余分にメンバー5人がいたいけでかわいく見えてしまう。というメリットに預かっているのである。いいだろう。私だけの特典だ。なので、めっちゃかわいくて仕方ない。これが、自分たちで自作の何かやるようになったら、途端に可愛くなくなるかもなー。
とりあえず、絶対センターヨンジュンの「あれだけなんでもかんでもダントツにできるのに、どこか所在なげな繊細なエロさ」が爆発してるのが最高だし、マンネ・ヒュニンカイの「K-POP初の欧州顔美少年が無意識にこれでもかと見せつけてくる美しさと親譲りの気持ちいいボーカル」が最高である。大人たちが少々無理めなコンセプトを強化していこうと、その辺が無敵であるうちは、TXTはコンセプトが変わっても注目に値する。

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※最後の最後に、今年みた「永遠に僕のもの」っていう映画も、BLで連続殺人犯の美しくも怖い(実話の)映画で、実に素ん晴らしかったので、BigHitのTXTPDさま、是非次作のモチーフにいかがでしょうか。あ、でも「永遠に僕のもの」って邦題だった。

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