お留守番のあとに。

正直ミン・ヒジンもパン・シヒョクも好きじゃないので、どうでもいい。

【ITZYとTWICE】自己肯定感のもち方と餅ゴリについて

今年、餅ゴリは冴えてる。めっぽう冴えている。
普段、「いや~また、うちの女の子たちに嫌われちゃいましてね、ハハハ。俺の曲じゃない方がいいっていうんですよ。ったく、ハッキリいうよね~女子は。まいっちゃった」と苦笑し、いいオジサンぶってる餅ゴリだが、ここぞという勝負時はただのゴリラに戻り、「よっしゃーっ!どけどけ~~俺の出番じゃ!俺の仕事だ!俺に任せろ!」と、すべての仕事を的確に指示しまくり完璧に仕切りまくって、我々に、見事な作品と活動をお届けしてくれる。さすがである。かっこいいとさえいう。正直、JYPに多くを望んでない私だが、たまにこういう神レベルの仕事を見せつけられると、尊敬せずにおられない。すげーな餅ゴリ。
何をそんなに感服しているのかというと、いわずもがな。ITZYとTWICEのプロデユースのことである。ITZYのディレクションの素晴らしさについて書こう書こうと思ってたら、TWICEでさらに(餅ゴリの能力)キレッぷりを見せつけてきたので、今私は倒れている。うまく説明できるかわからんがゆっくり説明するから、聞いておくれ。

 

①ITZYの自己肯定感とは

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当初は19年夏ごろデビュー予定だったのを、前倒しして2月にデビュー。グループコンセプトは、「強い自己肯定」だ。もちろん、それを決めたのは餅ゴリだろう。デビュー曲「dalla dalla」をみてみると、
「私は綺麗なだけで魅力がないお子様とは違う」「外見がちゃらいからって何よ」「私はあなたとは違うの」「あなたの基準に私をあわせようとしないで」「私は今の私が好き」「私は私」「他人の視線はどうでもいい」「やりたいこといっぱい」「お姉さんたちは、それじゃまだ大人になれないねっていうけどさ」「大人になんかなりたくない」「私の人生、好きに生きるわ止めないで」「私は自分がよくわかってる」と、強力なワードとフレーズのてんこ盛り。当然見た目もクールでかっこいい5人なので、JYP版ガールクラッシュとして大ヒットデビューとなった。新人で9冠なんて久々なんじゃないか。
が、この歌詞は若干強すぎて、自己肯定ならぬ自己陶酔とか自分勝手、あるいは単なるわがままなのでは? ととられかねない残念な点があった。若いっていいわね的な。そこで、「いかーん。それは誤解じゃーっ説明させろー」と鼻の穴をふんふん膨らませた餅ゴリが登場。第2弾「ICY」では、より丁寧により強力に説明すべく、あのpenomeco先生に歌詞を依頼。このぺの作詞が読めば読むほどよく出来ていて、餅ゴリが依頼したであろう事細かな要求が全部入っていて唸ってしまう出来なのだ。しかもダブルミーニングトリプルミーニングが多用されてるため、表面的には、ただのご機嫌サマーソングにしか聞こえないという素晴らしさ。ヘイ!とかボンボン!などの掛け声も含め、天才的である。頼んでよかった。そして餅ゴリも自ら曲を書きアレンジをしてできあがった「ICY」は、
「私クールに見えてるけど、実は夢があって、それに向かって燃えてるからほんとはいいたいこと山ほどあるのよね」「自信あるしどんどん近づいてるし」「まだまだ行くわよ」「みんなお喋りだね。いいよ。そのままずっと喋ってるといいわ。私は私でどんどん前へ進むから」「あなたの枠に私を合わせるつもりはないんだよね」「みんな私に忠告したいみたいだけど、私なら大丈夫きっとうまくやるわ。勝手に言ってれば」「きっといつかあなたたちもわかるはず」と、少々意訳しちゃったけど、自己肯定感を口に出さず胸に秘めることにしたのだ。「dalla dalla」では、大声で自分の正しさや違和感を叫んでたけど、今回はもう無視して黙々とやりたいことやってる感じ。「お前の基準にあわせるな」と抗議してたのを、「お前の枠に合わせるつもりないから」と進化したのだ。言ってる内容は同じだが、誰も下げることなく、ざわつかせることなく、信じる道を行きますよと。それをクールといいきって、100点満点のお手本ソングに仕立てたと思う。
そしてこれが、デビュー曲を超える大ヒットとなったことで、ITZYの「強い自己肯定感」イメージは揺るぎないものになった。


MVが、カラっと晴れたアメリカのストリートで、人々をほったらかして女子がガンガンガシガシ歩き続ける映像で、本当にスカっと気持ちいい。まさに健康的で前向きで、いいたいことがよく表現できてるなーと感心する。自己啓蒙ビデオと呼びたいくらいだ。ガールクラッシュとは、女子がかっこいい女子に憧れるさまをいうらしいが、これはもはや、かっこいいとかかわいいとかの問題ではない。とかく、自己肯定感が低い低いといわれてる今の時代。女子だけではない。男子も同じ。さらに若者層だけじゃなく中高年から老人まで、もうほとんど人が「自己肯定感が低い」といわれているらしいから。私が聞いたのは日本の話だが、韓国も同じような状況なんだろう。欧米は知らんけど、今って日本や韓国は、社会全体が閉塞感で溢れてて、1人1人が周囲に気を遣わねばならず、「私(僕)このままでいいのか」「私、このままじゃいけない」「自分のことが好きになれない」とみんな自分を否定しながら生きてる時代というわけだ。
そんな世の中、そんな時代に、ITZYの「自分は自分でいいのだ!」「私は私が好きだ!」「やりたいことをやるのだ!」といいきる自己肯定メッセージはとても胸に響くのだ。それを上手に表現してるITZYちゃん5人も素晴らしいが、やっぱり、これは餅ゴリの大勝利だろう。自己肯定感をもて!というメッセージは、いかにもJYPらしいのだが、そこに目をつけ上手に曲をつけて10代の女の子に歌わせるというセンス。ナイスである。ほんとに冴えてる。餅ゴリの音楽的センスがいかほどのものなのか、私にははかりかねるが、あの人がこんなにマーケティング能力に長けているとは正直思わなかった。やっぱり、自分で歌詞かいたり曲書いたりできるプロデューサーが社長だと、なにかと仕事も早く進むし、こんなに思ったとおりいくもんだなあと思う。


② TWICEの自己肯定感とは

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そして、「ICY」のあとを継ぐ形で、TWICE先輩の「Feel Special」リリース。
こちらも、ひっさびさに餅ゴリの作詞作曲アレンジ。もう大活躍。もともとTWICEのタイトル曲は、餅ゴリより他人の手によるものが多かったようだが、今回ばかりは、絶対に餅が全面プロデユースする必要があった。なぜなら、ITZYの「ICY」とTWICEの「Feel Special」はセットだから。2つで1セットというほどでもないが、うーん、なんというかシリーズ? 自己肯定感シリーズ? 自己肯定にまつわるエピソード集? とにかく餅ゴリとしては、続けざまに、腕をぶるんぶるん振り回してこの仕事にとりかかったと思われる。それくらい、渾身の一作となっている。

 

そもそも、TWICE先輩は、最初から自己肯定感に溢れていた。
デビューからこれまでの4年半。常に元気で明るく正しく前向きで健康的で、しかも親しみやすいというスタンスだったはずだ。さすがに年齢とともに、「あわてんぼうさん」とか「ドジっ子」的な幼稚色は抜けていき、ちょっとずつ大人っぽくなってきてたが、しかし、常に明るく元気でPOPだったことは変わらない。それが彼女たちの持ち味であり、人気のもとだったわけだから。
そんなTWICEが、なんと、初めて自らの弱さをさらけ出したのだ。さすがの餅ゴリもこの博打は怖かったと思う。

「Feel Special」の歌詞をみると、
「急にひとり」「どこへいっても居心地悪くてへこむ」「世の中がひどいこといってきて落ち込む」「つらいひどい言葉をぶつけられて」「ただ黙って座っている私」「私なんてとるにたらない人間なのかも」「消えていなくなっても誰も気づかないかも」「ずっと隠れてたい、向き合いたくない」「だけど、そんな時!」「あなたが私をたちなおらせてくれる」「私って特別な存在なんだと気づかせてくれる」「あなたがいるから私はまた笑える」という感じ。
こんな弱いTWICE見たことない。世間が騒ぐのも無理はない。どんな曲でも、あの「FANCY」でさえ常に笑顔で歌ってた彼女たちが、この曲では笑顔を封印してるくらいだ。一切笑わないTWICE。そんなのTWICEじゃない~~。って感じだが、それだけにこのインパクトの強さったらない。笑わないかわりに、大人っぽく少々厚化粧をしてアンニュイな表情を浮かべてみれば、まぁ~~なんと美しいこと。もともと美人だったのに、これまでは、ひたすらかわいく顔を作ってたせいで、こんなに美しいご尊顔だったこと忘れてましたよ。有難や~~ありがたや~と手を合わせて拝みたくなるくらい美しいのであった。

 

そして、自己肯定感の持ち方。ITZYちゃんは、もとより自分を疑うことを知らない強い自己肯定感がある。一方、TWICEが歌う女性は、世間や周囲のせいで傷つき、自信を失ってしまった弱い状態だ。そこが徹底的に違う。それで「いなくなればいい」とかぐちゃぐちゃマイナスなことばかり考えて「じっと座ってる」ひどい状態なのだが、しかし不安障害で休養中のミナちゃんに「もう隠れていたくて」「向き合いたくない」と歌わせたのはすごい。まさかそこだけミナちゃんが作詞したわけないし餅ゴリが歌わせたんだろうが、ちょっと厳しいのでは。今のミナがそう歌うとアピール力満点だが、それつらくない? 本人が無理してないならいいけど。

「あなた」にあたるものが、恋人だったり親友だったりメンバーや家族やファンだったり、なんでもいい、誰か自分を思ってくれる存在がいて結果的に、「やっぱり私は価値ある存在」と立ち直る、そういう一度下がって最後に上がる「自己肯定感の持ち方」なのだ。
ちなみに、こちらペノ先生ではなく餅ゴリが全部書いている。もひとつちなむと、ある時改まって、餅ゴリはTWICEメンバーを夕食会に誘い、そこでざっくばらんに4年間の気持ちを聞いて、その話をもとに作詞したらしい。あれこれたくさん喋った中から、餅ゴリが「それだっ!」と思った何気ない一言二言を膨らませたのだろうが、喋った人間より、その言葉を拾ったゴリラの勘のよさを誉めるべき。

そして、助けてくれる「あなた」に感謝する美談にせず、フォーカスが「私」にあるところもポイント。あなたって、いつも私を立ち直らせてくれて最高!有難う!あなたがいないと私はダメだわ!となりそうなところ、そういうことは一切歌ってなくて、終始「私は特別な存在」ということを「feel」する歌になっている。TWICEの歌は、いつもサビ部分で何度もタイトルフレーズを繰り返してくれるので、何が言いたいのかわかりやすく有難いのだが、今回も「自分が特別な存在であることに気付く」ことが大事っていう歌に仕上げてる。


これが、年上の女性、大先輩としての「自己肯定感」の持ち方だだ。
そういえば、ITZYちゃんのデビュー曲で、「お姉さんたちに、そんなんじゃまだまだ大人にはなれないわねっていわれる」という歌詞がズバリ出てくる。その通り。繋がってるのだ。TWICEは、お姉さんだけに大人なのだ。いつまでも、自分を疑わずただただ自分を信じられた時代は過ぎて、今は大人になって世間や周囲にいわれる言葉に傷ついてしまう女性なのだ。どちらもリアルだし共感するが、どっちが心を打つ?といわれると、やはりTWICE姉さんの方だろう。人間、誰しも弱みを見せられてしまっては共感せずにおれない。「わかる!」「私も!」と思わずにおれない。しかも、あの無敵だったTWICEが、「腹を見せてくれた」わけである。大変な事態なのである。ああ、こんな強い人たちもこんな思いをするのか、と感動しない人がいるか。そして、最後は「へこんでもいいんだよみんなそうだよ」「1人で立ち直れなくても大丈夫」「自分が特別であることを思い出させてくれる人は必ずいる」と教えてくれるのである。無理やりまとめれば、「ひとは弱くて1人じゃ生きていけないけど、やっぱりあなたは特別なんだよ」ということか。なんとリアルな教えであることよ。

 

なんだか、ITZYの自己肯定感より、TWICEの自己肯定感の方が上。みたいな流れにみえるかもしれない。でも、そうじゃない。一度弱さを見せてからの強い自分に戻るTWICEに共感するが、私は、自分を疑うことさえない強いItzyちゃの姿も愛おしい。すごくかわいい。単純に「行け行けーっ」と応援したくなる。あれだけ強気なことしか歌ってない彼女たちの若さを引き立て逆に可愛く思えてくるように仕向けてるのも、TWICE 先輩の役割。だから、この二曲はセットなのだ。いっじ聞いて元気になって、たまに凹んだらとわいす聞いておんおん泣いて。また元気になったらいっじ聞いて…そういうことだ。

いずれにせよ、「自己肯定感を強くもつ」というテーマは本当に今大切だなと改めて思ったし、若い女子たちのアイドルグループなのに、ラブソングどころか、そんなことをメッセージとして明るく訴えてくる餅ゴリ、本当にすごいと思った。ガールズグループをやらせたら天下一品!といわれてきた餅ゴリのセンスと手腕を初めて実感した。それがいつも冴えてるといいけど、とりあえず、TWICEの日本人版はどうだろうなダメだろうなと思っちゃう私・・。そう、そんな私の自己肯定感はもちろん低い。